検察審査会により強制起訴された小沢一郎民主党元代表に無罪判決が言い渡されたことで、検察官が起訴を見送った事件を立証する難しさが改めて浮き彫りとなった。他の強制起訴事件も審理が進むが、検察官役の指定弁護士は、検察当局の捜査資料を証拠の中心にせざるを得ないという「ハードル」も顕在化。争点整理に時間を要するケースもあり、制度そのものに課題が突きつけられている。
■困難な新証拠入手
強制起訴事件の罪名は詐欺、政治資金規正法違反、業務上過失致死傷などさまざまだが、共通するのは、指定弁護士が起訴内容を立証することの難しさだ。背景には、新しい証拠を得にくいという事情がある。
指定弁護士は必要に応じて補充捜査をすることも可能だ。だが、小沢元代表の事件では関係者に聴取要請を断られ、自宅などへの捜索にも踏み切れなかった。結果、法廷に出された直接証拠は、検察が作成した供述調書が中心に。調書についても、裁判所が取り調べの問題点を指摘し、大半が却下されるなど立証が制約され、無罪判決の一因となったとみられる。
最高裁によると、平成23年に検審が審査を行ったのは2178件。このうち1度目の審査で「起訴相当」とされたのは、わずか8件で約0・36%。22年は約0・43%、21年は約0・44%で、いずれも強制起訴制度導入前の18〜20年の0・37〜0・54%という変動枠内に収まっている。
「国民目線」で処分の妥当性を判断する制度として導入された検審だが、法曹関係者は3年間で6件という強制起訴件数を「極めて慎重に制度が運用されている」とみる。
一方、膨大な捜査資料の把握に加え、多くが無罪主張の事件だけに、争点整理に時間がかかるケースも少なくない。22年4月20日に全国で初めて強制起訴されたのが、13年7月に11人が死亡した明石歩道橋事故で、業務上過失致死傷罪に問われた兵庫県警明石署元副署長の榊和晄(かずあき)被告(65)。
検察官によって起訴された“共犯”がいる点でも小沢元代表の場合と共通する。
強制起訴そのものは全国初だが、公判前整理手続きに費やされた期間は実に1年9カ月。事故の予見可能性の有無や強制起訴時点での公訴時効の成否に加え、強制起訴の適法性も争点に盛り込まれ、今年1月にようやく公判が始まったばかりだ。
■ボランティア状態
一方、22年に発生した沖縄県・尖閣諸島付近の中国漁船衝突事件では、公判の見通しさえ立っていない。起訴議決から約8カ月を経て今年3月、中国人船長が強制起訴されたが、船長は帰国。起訴状が2カ月以内に送達されなければ起訴の効力は失われる。
こうした“苦労”に対して定められている指定弁護士の報酬は、公判の期間にかかわらず19万〜120万円。ある指定弁護士は「現状はボランティア」と評している。
◇ ◇
起訴内容骨子
小沢一郎元代表は石川知裕衆院議員ら元秘書3人と共謀し、(1)陸山会が平成16年10月12日ごろに小沢元代表から借り入れた4億円を同年分の政治資金収支報告書に収入として記載せず(2)同月支払った土地取得費計約3億5200万円を、16年分ではなく17年分収支報告書に支出として記載し(3)土地の取得時期を16年分ではなく17年分の収支報告書の資産欄に記載した。
強制起訴に立証の壁 検察審査会制度 課題に直面
民主党元代表小沢一郎被告に対する26日の東京地裁判決要旨は次の通り。
【起訴議決の有効性】
検察官が任意性に疑いのある方法で取り調べて供述調書を作成し、事実に反する捜査報告書を作成し、検察審査会に送付することはあってはならないが、証拠の内容に瑕疵(かし)があることと、手続きに瑕疵があることは別の問題だ。
仮に事実に反する内容の捜査報告書のために検察審査員の判断に誤りが生じ、起訴議決に至ったとしても、そのことから起訴議決が無効とするのは法的根拠に欠ける。
検察審査会の会議は非公開とされており、捜査報告書と起訴議決との因果関係を審理、判断の対象とすること自体が相当ではない。捜査報告書あるいは供述調書の証拠能力や信用性を否定することによって、被告の救済を図るべきだ。
もちろん、このような検察官の行為で検察審査会の判断を誤らせることは決して許されない。東京地検特捜部で事件の見立てをし、取り調べ担当検察官が見立てに沿う供述を獲得することに力を注いでいた状況をうかがえ、この状況が背景になっているとも考えられる。
以上の通り、起訴議決に重大な瑕疵があり、手続きが無効と解することはできないから、公訴棄却の申し立ては理由がなく、採用できない。
【取引の経過】
元秘書の石川知裕衆院議員は2004年10月、土地の売買契約を締結し、小沢被告から4億円を受け取った。巨額の現金を入金する場面を銀行員やマスメディア関係者から目撃されることを懸念し、陸山会の複数の預金口座に分散入金した。
しかし、このままでは04年分の収支報告書で4億円を被告からの借入金として計上し、土地取得費などの支出を計上することになり、巨額資金が被告の個人資産としてあり、これを提供して陸山会が高額の不動産を購入したことを公表すれば、追及的な取材や批判的な報道を受け、被告が政治活動上の不利益を被る可能性があると思った。
そこで収支報告書等で4億円を公表せず、陸山会が銀行からの融資で土地を購入した旨の対外的な説明を可能とするために預金担保貸付を利用することにした。土地の取得等を04年分ではなく、05年分の収支報告書に記載することとし、公表を1年間遅らせる口実を作るため、売買契約の決済日を05年に遅らせる交渉を行うこととした。
石川議員が4億円の簿外処理を意図した動機は、被告が政治的に不利益を被る可能性を避けるためだったと認められる。
【虚偽記入と不記載】
土地の取得及び取得費の支出は05年分ではなく、04年分の収支報告書に計上すべきだった。陸山会が04年10月29日に土地の所有権を取得したことと、土地取得のために04年中に計3億5261万6788円を支出したことを、05年分に計上したことは、虚偽記入ないし記載すべき事項の不記載に当たる。
小沢被告が04年10月12日、土地の購入資金等に充てるため、陸山会で費消することを許容して石川議員に交付した4億円は、陸山会の被告からの借入金収入として認定すべきだった。
政治資金規正法では収支報告書に「すべての収入」を記載することが求められており、この4億円と銀行から借り入れた4億円のいずれも、被告からの借入金として04年分収支報告書に計上すべきだった。04年分報告書で被告からの4億円が計上されず、銀行からの4億円のみが計上されたことは虚偽記入に当たる。
石川議員については04年分報告書の虚偽記入と不記載、池田光智元私設秘書については05年分の虚偽記入について故意と認められる。
【被告の関与・認識】
被告は4億円の融資関係書類に署名した。巨額の経済的負担を求める取引で、秘書に任せた裁量の範囲を超えており、秘書の石川議員は取引の必要性を被告に理解してもらう必要があった。
巨額の個人資産はそれまで公表されていなかった。批判的な報道の対象となり、政治的に不利益を被る可能性があることは被告も容易に想定できることだ。4億円の授受も人目につかない方法で行おうとしたとうかがわれる。多岐にわたる複数事実が存在し、4億円の簿外処理の方針を秘書から報告を受け、了承していたことを強く推認させる。
被告は陸山会において土地を建設費も含めて4億円程度で取得することを了承、売買契約や決済日が04年10月と認識していたと認められる。その上で、土地取得や取得費の支出を04年分収支報告書に計上せず、05年分に計上することとし、そのために売買契約の内容を変更するなど、土地公表の先送りをする方針も報告を受けて了承したと認められる。銀行からの融資の目的が本件4億円を収支報告書などで公表しない簿外処理であることも承知していた。
さらに04年分収支報告書で本件4億円が借入金収入として計上されないことなどを04年10月の段階で、05年分については06年3月ごろにあらためて報告を受けて認識し、了承した。
土地公表の先送りや、簿外処理が被告の政治活動上の影響をおもんぱかってなされたこと、被告が秘書の行為を止められる立場にあったことなども認められる。共謀共同正犯が成立するとの指定弁護士の主張には相応の根拠があると考えられなくはない。
【被告の供述】
被告は売買契約の締結や4億円の簿外処理といった方針の指示や報告はなく、虚偽記入や不記載がされた04年分と05年分の収支報告書提出の報告を受けたこともないと公判で供述している。
しかし、石川議員の供述と相反している上、公判で報告を受けていないと断言しながら、尋問者の追及を受けて記憶がないという趣旨などと供述を変遷させた。
また預金担保貸付の融資関係書類に署名した際、当初は「石川からサインしてくれと言われて署名しただけである」などと不自然な供述をし、最終的に土地購入代金等に充てると認識していたと認めるなど変遷した。
本件が問題となった後も「収支報告書は一度も見ていない」とする点などは信じられない。秘書から各取引等や収支報告書の作成提出の報告を受けたことは一切ない旨の供述は信用性が乏しい。
収支報告書の作成や提出を秘書に任せきりにし、全く把握していないことや、会計責任者の役割等についても理解を欠く供述も、政治資金規正法の精神に照らして芳しいことではない。
【結語】
石川議員や池田元秘書によって作成、提出された04年、05年分の収支報告書の記載は虚偽記入や不記載に当たる。さらに被告は簿外処理などについて石川議員らから報告を受けて了承していたと認められることや、被告と秘書との関係等を総合すると、被告の共謀共同正犯の成立を疑うことには相応の根拠がある。
しかし、4億円の簿外処理などが違法とされる根拠となる具体的事情については報告・了承はなく、被告が事情を認識していなかった可能性がある。被告が4億円を借入金として収入計上する必要性や04年分の収支報告書に計上する必要があると認識していなかった可能性を否定することができない。
これらの認識は共謀共同正犯としての故意責任を問う上で必要なもので、法的に刑事責任を問うことはできない。
被告の故意及び実行犯との間の共謀について証明が十分ではないため、無罪の言い渡しをする。
小沢系「当然だ」 野党「説明責任果たせ」 政界コメント集
小沢一郎元民主党代表に無罪が言い渡されたことについて、民主党の小沢氏に近い議員は一様に安堵(あんど)の表情を浮かべた。野党からは説明責任を求める声が上がった。
民主党の田中真紀子元外相「こういう結果が導きだされて感動している。小沢先生にもリーダーシップを発揮してもらい、政治を動かしていただきたい」
山岡賢次元前国家公安委員長「当然の結果だ。日本の法と正義はきちっと守られるという結果を受けてほっとした」
木村剛司(たけつか)衆院議員(小沢系)「(首相が)挙党一致でやりたいなら小沢氏が活躍できるポストを与えるべきだ」
国民新党の下地幹郎幹事長「小沢氏が今まで以上に自由な政治活動ができるようになることで、政界に大きなインパクトをもたらす」
自民党の岸田文雄国対委員長「証拠不十分で無罪になったとの認識だ。政治的・道義的責任は大変重い。裁判を理由に証人喚問を拒み続けてきたから、再びしっかり証人喚問を求めていく」
自民党の茂木敏充政調会長「依然、グレーであることに変わりない」
自民党の麻生太郎元首相「秘書3人が有罪判決を受けたのに、本人は無罪だから私は関係ないということが通るのか」自民党の町村信孝元官房長官「一人の政治家の裁判で日本国の政治が左右されという構造だけは早く脱却しないと政治が正常に機能しない」
公明党の山口那津男代表「小沢氏の道義的、政治的責任はなお残る。国会、国民に対しきちんと説明責任を果たすべきだ」
みんなの党の渡辺喜美代表「民主党内のドタバタ劇がさらに深刻になる。民主党が政党の体をなしていないのなら、早く分裂した方がいい」
共産党の志位和夫委員長「今こそ(小沢氏は)証人喚問に応じるべきだ。土地購入資金の出所、胆沢ダムをめぐるヤミ献金問題など解明すべき問題がたくさんある」
社民党の福島瑞穂党首「政治倫理審査会で説明責任をたださなければならないが、判決を精査するため一呼吸置くべきだ」
たちあがれ日本の園田博之幹事長「無罪であろうとどうであろうと小沢氏に影響力があるわけがないし、われわれに関係ない」
新党改革の舛添要一代表「さまざまな曖昧模糊(あいまいもこ)とした国民の疑惑は簡単に払拭できない。無罪判決が9月の代表選に向けて民主党内に一つのマグマを形成することは確かだ」
間接証拠、長期拘束に裁判員は 記者解説
男性3人が相次いで不審な死を遂げた事件の裁判員裁判で、殺人などの罪に問われていた木嶋佳苗被告(37)に対し、さいたま地裁は13日、死刑を言い渡した。今回の裁判は、一般市民である裁判員にとって難しい判断だったのではないか。取材を続けてきた社会部さいたま支局・飯田毅象記者が解説する。
今回の事件では、木嶋被告が殺人について犯行を否認していた上、目撃者などの直接証拠がなく、裁判員は難しい判断を迫られたといえる。
裁判員制度の創設にも関わった高井康行弁護士は、裁判員が様々な間接証拠から木嶋被告の犯行を認定した今回の判決について、「完全否認で、状況証拠しかない。それで裁判員が有罪・無罪の判断を適切にできるのかと、(制度導入の際に)大変議論になった。最終的には国民を信頼しようと。それが今回、十分に機能した。より裁判員制度を定着していくという意味で、意義のある判決だと思います」と話している。
今回は、裁判員の任期が100日間となった。判決後、裁判員は「それほど長く感じなかった」と話しているが、今後、さらに長い裁判が開かれる可能性もある。そうしたケースに備え、司法関係者は、裁判員の負担をより一層、軽くする努力を続ける必要があるといえそうだ。
[特捜検事逮捕]同僚検事ら3人からも集中聴取 最高検
郵便不正事件に絡む証拠改ざん事件で、最高検が大阪地検特捜部主任検事、前田恒彦容疑者(43)=証拠隠滅容疑で逮捕=から改ざんを打ち明けられた同僚検事ら3人を集中聴取していることが分かった。前田検事は取り調べに「フロッピーディスク(FD)の記録をUSBメモリーに移したつもりが誤ってFD本体のデータが変わった」と過失を主張しているとされる。最高検は前田検事が同僚検事には「意図的改ざん」を示唆していたとみて、3人から当時のやりとりを聴いた模様だ。
最高検は週明けにも地検の小林敬検事正、玉井英章前次席検事(現大阪高検次席検事)から事情を聴く方針。改ざん疑惑の報告を受けながら、調査しなかった理由などの説明を求めるとみられる。また、大坪弘道前特捜部長(現京都地検次席検事)についても再聴取する。
今年1月末、厚生労働省の村木厚子元局長=無罪確定=の初公判で、弁護側がFDの記録内容について追及。事件捜査をした検事が出張中の前田検事に連絡を取ると、前田検事は「FDのプロパティ(更新記録などの付属情報)を変更して返却した」と話したという。
この検事が別の特捜部検事に話し、同事件の公判担当検事にも伝えられた。3人は、佐賀元明前特捜部副部長(現神戸地検特別刑事部長)に「前田検事がFDに時限爆弾を仕掛けた」などと訴えたが、地検は調査を見送った。集中聴取を受けたのはこの3人。最高検は、前田検事が意図的改ざんを告白したため、3人の検事が上司に報告する事態になった疑いがあるとみている
橋下知事が「道頓堀でケツを出すより下品」と弁護士会幹部を懲戒請求へ 処分内容の漏洩めぐり
山口県光市で起きた母子殺害事件をめぐり、被告弁護団の懲戒請求を呼びかけたことについて、大阪弁護士会から業務停止2カ月の懲戒処分を受けた大阪府知事の橋下徹氏は21日、懲戒処分の内容が発表前に報道機関に漏れたことは「道頓堀でケツを出すより下品だ」と指摘。大阪弁護士会会長、副会長、懲戒処分を決めた綱紀委員会のメンバーについて、大阪弁護士会へ懲戒請求を行う意向を明らかにした。
橋下氏は、処分内容が事前に報道されたことは、弁護士会幹部が事前に内容を漏(ろう)洩(えい)させたためと指摘。「裁判で事前に判決が漏れることと同じだ」と批判し、懲戒請求することにしたという。
「自分を正当化する気はないが、しゃべってはいけないのは幼稚園児でも分かることで、こちらの方が下品だ。誰が漏らしたのかは分からないが、少なくとも誰かがしゃべっている。こんなことは前代未聞だ」と述べた。
失墜・特捜捜査の内幕:障害者郵便割引不正/下 「ドブネズミ」罵声
「国会議員に渡す金だったんだろ。早く言え、クズ野郎」。大阪拘置所(大阪市都島区)2階の5号取調室。大阪地検特捜部の男性検事は、机を挟んで座る広告会社元取締役、阿部徹被告(57)=大阪地裁で起訴内容を認め公判中=を怒鳴り続けていた。
阿部被告は09年2月、障害者向け郵便物の料金割引制度を悪用し、大量のダイレクトメール(DM)を発送したとして郵便法違反容疑で逮捕された。その後、同じ容疑で3回も逮捕され、拘置は112日間に及んだ。取り調べで聴かれた内容の大半は、郵便料金の不正ではなく国会議員への金銭供与疑惑だった。
障害者団体の刊行物を装って格安でDMが発送された郵便法違反事件。特捜部は背後に国会議員の関与があると見込んで捜査を進めていた。その突破口に狙いを定めたのが阿部被告だった。
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特捜部は内偵捜査の過程で、民主党衆院議員の名刺が張られた阿部被告のノートと、障害者団体「白山会」の会長(最高裁で郵便法違反の有罪確定)に数百万円渡した領収書を入手していた。「白山会会長を通じて議員に渡す金では」とにらんだ。
阿部被告は拘置中、取り調べの模様を日記につけていた。「このドブネズミ、死んだほうがましや」「15年刑務所に入っていろ」。検事はノートやファイルで机をたたき、罵声(ばせい)を浴びせた。そして「おれの得になることだけ言え」と、議員への「わいろ」を会長に託したと認めるよう迫った。阿部被告は「会長への謝礼などの金で、わいろのつもりはなかった」と否認していたが、逮捕から16日後「あの金は議員に渡ったと思う」と書かれた供述調書に署名した。
阿部被告の弁護人は「異常な取り調べだった」と、公判で調書の証拠採用に同意せず、逆に阿部被告の日記を証拠請求した。阿部被告は「国会議員の名刺があったから逮捕された。それだけでしょ」と振り返った。
09年4月に逮捕された白山会会長も、阿部被告から受け取った現金の行き先を追及された。会長の弁護人(当時)は「検事は親族の逮捕までほのめかし、議員に金を渡したと認めるよう迫った。客観的証拠は示さず、自白だけで事件を作ろうとしている」とあきれ返った。会長は最後までわいろを否定した。
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厚生労働省に捜査の矛先を変えた特捜部は、同様に厚労省職員らを強引に取り調べた。結果、村木厚子元局長(54)=大阪地裁で10日、無罪判決=が、不正な証明書交付にかかわったという供述調書が次々にでき上がった。
「国会議員や官僚の犯罪は国政の中枢をゆがめる。捜査するのは当然。特捜にはその使命がある」と話すのは、元大阪地検特捜部長。一方、元特捜検事は「東京と違い大阪は事件のネタが小ぶりで少ない。乏しい成果を補おうと無理をする傾向がある」と指摘する。
成果を求めて、事実をねじ曲げた「官僚の犯罪」が作られた。特捜部は、原点に立ち返った組織の見直しが迫られている。
郵便不正事件:正義見失った敏腕 特捜検事逮捕
敏腕検事は、なぜ正義を見失ったのか−−。証拠品のフロッピーディスク(FD)のデータを改ざんしたとして、大阪地検特捜部検事の前田恒彦容疑者(43)が、証拠隠滅の疑いで最高検に逮捕された。特捜部内で「十年に一人の逸材」「将来の特捜部長」と期待されていた。一方、大阪地検幹部は会見で「捜査は最高検に任せている」と繰り返した。地に落ちた信頼。再生への道のりは遠い。【日野行介、久保聡、古屋敷尚子】
前田検事は東京、大阪の両地検特捜部を歴任した生粋の「特捜検事」。検察庁内では「優秀で、説明がうまい」と評価が高い一方、「功名心が強く、無理な捜査をする」との批判もあった。
大阪地検のある幹部は「取り調べでは、容疑者の気持ちになって本音を引き出すことがうまい、一級の『割り屋』だった」と話す。「『しゃべらないものはしゃべらない』としっかり言う検事だった」と評する声もある。別の地検幹部も「将来の大阪地検特捜部長。前田に任せておいたら大丈夫という安心感がある」と評価していた。ただ“暴走”を懸念する声もあり、「自信家で自分がこうと思ったら、こだわり過ぎる面がある」とも言われていた。
前田検事は大阪地検特捜部に在籍していた05年、西村真悟・衆院議員(当時)の弁護士法違反事件を手がけた。前田検事に絶大な信頼を寄せる地検上層部から「捜査しろ」との“特命”を受け、特捜部の直属の上司にすら秘密にして内偵捜査を進めた。当時の同僚検事は「彼は功名心が強い。部内の同僚は冷たい目で見ていた」と吐き捨てるように言う。
今回、証拠改ざんが発覚した「郵便不正・偽証明書事件」では、前田検事は昨年5月下旬、事件の主任検事として特捜部長とともに検察幹部に説明し、事件着手の決裁を得た。当時の検察幹部は「彼は書類も上手だし、説明もうまい。だまされたようなものだ」と憤った。
また、担当した事件の被告側から「取り調べで誘導された」と批判されたこともある。今後、過去の事件について、捜査や取り調べが正当だったか検証を求める声が上がる可能性もある。
前田検事は広島大法学部卒、96年任官。広島、水戸地検などを経て99〜06年に2度、大阪地検特捜部に在籍。06年から東京地検特捜部で、福島県知事汚職事件や防衛汚職事件の捜査を担当した。08年から大阪地検特捜部に移り、音楽プロデューサー・小室哲哉氏の5億円詐欺事件などの捜査をした。
21日午後10時過ぎ、シルバーのワゴン車で、大阪拘置所(大阪市都島区)に入った前田検事。乗っているとみられる後部座席はカーテンで仕切られており、表情はうかがえなかった。
大阪府枚方市にある前田検事の自宅マンションの家宅捜索には、21日午後9時40分ごろ、検察関係者5人が車で到着した。インターホンを鳴らし続けても反応はなく、「前田さん、検察です。説明しますので開けていただけますか」などと約8分間、繰り返し呼び掛けた。前田検事の妻とみられる女性が伏し目がちにドアを開けると、関係者は報道陣のフラッシュを浴びながら一斉に中に入った。
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郵便不正・偽証明書事件の捜査を指揮した前大阪地検特捜部長の大坪弘道・現京都地検次席検事は21日、毎日新聞の電話取材に「もう、そっとしといてもらえないか」とだけ語り、詳しい説明を拒んだ。



