日本銀行が、事実上の「インフレ目標」導入に踏み切った。物価が下がり続ける「デフレ」から抜け出すまで金融緩和を続けるという宣言だ。果たして、物価や景気を押し上げることができるか。
14日昼過ぎ、大手銀行などのディーリングルームには驚きが広がった。日銀が物価目標と追加の金融緩和を打ち出したからだ。担当者は「想定外、かなりのサプライズ(驚き)」。
そのころ野田政権には満足感が漂っていた。「日銀には説明責任を果たし、透明性を向上してもらいたいと申し上げてきた。そうしたことも考えた結果ではないか」。古川元久経済財政相は14日夕にこう語った。
米連邦準備制度理事会(FRB)が1月に事実上のインフレ目標を導入し、一時、日本の輸出産業を苦しめる円高が進んだ。政府内や与野党から日銀への圧力は一気に強まった。「日銀の物価の目安は分かりにくい」「米国のようにできないのか」。日銀の白川方明(まさあき)総裁は国会で連日のように突き上げられた。
野田政権は消費増税を最優先に掲げている。だが、増税は消費を冷やすおそれもあり、物価が下がり続ける「デフレ」の脱却が欠かせない。こうした条件を求める与野党の声にも応える必要があった。
白川総裁は14日の記者会見で「政治的な圧力に屈して日銀が本来考えていないことをすることは全くない」と強調した。そう言うものの、日銀には物価目標を明確にしても効果があるかは不明だとして、慎重論が根強かった。最終的には政治の「圧力」が日銀の背中を押したとみられる。
政府内では「デフレ脱却に向けた積極的な措置だ」(安住淳財務相)などと歓迎の声が広がった。さらに、民主党内では「『物価安定のめど』ではまだあいまい。10兆円程度の資金供給も踏み込みが足りない」との声も出始めている。
民主党は近く政策調査会に円高対策を話し合う場をつくり、追加金融緩和の必要性なども議論する。同党の円高・欧州危機等対応研究会では「インフレ目標2%に向けた資金供給」との考え方も出ており、来週にも日銀に追加措置を求める中間提言をまとめる構えだ。日銀への圧力はやみそうにない。
■「3月危機」に備え
圧力だけではない。欧州の政府債務(借金)問題でささやかれる「3月危機」への備えもある。
欧州では3月、ギリシャが大量の国債の返済期限を迎える。欧州連合(EU)などの支援を受けて返済資金を確保できるのか。金融市場は緊迫している。もし返済がうまくいかなければ、国債を抱えている欧州の金融機関の経営が悪化し、金融危機が広がる。
日本では年度末を迎える。1ドル=70円台後半で定着した「超円高」が日本経済を支える輸出産業を苦しめている。
2012年3月期の第3四半期決算では、パナソニックやソニー、マツダなど電機、自動車の大手企業が大幅な赤字になり、工場閉鎖などのリストラも相次いだ。通期でも赤字が膨らみ、景気を腰折れさせかねない。
「早めに動いて日銀の『本気度』を示すべきだ」。危機感を強めた日銀幹部らは週末返上で政策を練り、一気に「インフレ目標」と追加緩和に踏み切った。白川総裁は「(物価安定の)めどを示す言葉と合わせて、政策的な行動を取った方が金融緩和効果があると判断した」と語った。
金融緩和の流れは世界に広がっている。昨年末には欧州中央銀行(ECB)が大量に資金を市場に流し込んだ。米国も「インフレ目標」導入に続き、資金を大量に流し込む「量的緩和」第3弾を示唆している。
08年のリーマン・ショック後の世界不況では財政出動で景気を立て直そうとした。その結果、どの国も借金が膨らみ、新たな財政出動は難しく、中央銀行の金融政策に頼らざるを得なくなった。金融緩和だけで景気を押し上げられるかどうか。日本を含めて世界経済は政策の選択肢を失いつつある。(橋本幸雄、吉川啓一郎)
日銀、デフレ脱却へ宣言 数値目標、焦りから米に追随
日銀が10兆円の追加緩和決定:識者はこうみる
クレディスイス証券 チーフエコノミスト 白川浩道氏の見方が一番まともである。[東京 14日 ロイター] 日銀は13─14日に開いた金融政策決定会合で、資産買い入れ基金の増額による追加緩和策を決定した。国債など金融資産の購入原資となる基金の規模を従来の55兆円から65兆円に10兆円引き上げた。
市場関係者のコメントは以下の通り。
●インフレターゲット的なニュアンス含む
<みずほインベスターズ証券 チーフマーケットエコノミスト 落合昂二氏>
為替、株式相場ともに比較的安定していたため、追加の緩和を急ぐタイミングではなかったとみていただけに、今回の緩和はサプライズだった。
望ましい物価水準について、「中長期的な物価安定の理解」を「中長期的な物価安定の目途」に切り替えたことも、事前に観測はあったが、この点も驚きを持って受け止めている。
声明文を見ると、書き方にかなりインフレターゲット的なニュアンスが含まれている。金融政策において、目指す物価上昇率を明確にした文言がある。日銀の金融政策は、物価にある程度能動的に働きかけることを強く入れている印象だ。今までになかった表現だ。
円債市場のセンチメントは買い戻しムードとなり、しばらく強いのではないか。●介入準備として適切なタイミングでの実施
<野村証券 金融市場調査部 チーフ為替ストラテジスト 池田雄之輔氏>
きょう決定された日銀の追加緩和は、ドル買い介入を打ち出す準備として適切なタイミングで実施されたとみている。ギリシャをめぐっては、依然としてダウンサイドリスクがくすぶり、今後もギリシャ問題をきっかけに欧米の株価が下落し、米国で量的緩和第3弾(QE3)の期待が高まる可能性があるとみている。その際はドル/円でも下値リスクが高まるだろう。
円が最高値を臨む場面まで待たずに、このタイミングで定例会合で前倒しに追加緩和を打ち出したことは、介入への準備的なステップとして評価できる。
●残念な判断、無秩序に際限なく緩和進む印象
<SMBC日興証券 チーフマーケットエコノミスト 岩下真理氏>
物価安定の「目途」との表現に変更したり「当面は1%を目途」と数字を明示したことは、短期間で柔軟に対応したことについて評価するが、10兆円の資産買入れ増額は評価できない。まず、景気認識も変えず、金融市場の緊張も幾分和らいでいるとしていることと関係なく緩和してしまった。さらに、これから期末も控え、米金融政策の先行きの展開についても緩和余地があるこのタイミングで追加緩和してしまった。さらに、政治の圧力がここ1週間強まっていこともあり、圧力に屈したという印象になってしまった。結局は、金融政策は今後も際限なく進んで行くという印象を与えてしまい、残念だ。
今後へのカードとしては、買い入れ期間の延長や長期国債買い入れ残存期間を延ばすといった方法を残しており、これで終わりではないだろう。
●追加緩和はサプライズ、望ましい物価水準をより明確化
<三菱UFJモルガン・スタンレー証券 シニア債券ストラテジスト 長谷川治美氏>
日銀の追加緩和策決定は、事前に観測はあったが、円債マーケットにサプライズだった。基金の買い入れを長期国債のみを対象に10兆円増額することになった。前日に発表した2011年10─12月期国内総生産(GDP)が2四半期ぶりのマイナス成長となったほか、1月下旬の米連邦準備理事会(FRB)の時間軸の長期化以降、外為市場における円高進行に対する政府サイドの懸念が強い中、日銀としては何もしないという選択肢はなかった。
基金の増額と同時に「中長期的な物価安定の理解」を「中長期的な物価安定のめど」と変えた。これまで日銀は望ましい物価上昇率について、「2%以下のプラスで、中心は1%程度」としていたが、「当面は1%めど」と、「インフレ目標」に近いかたちで従来より明確にした。
ただ、今のところ日銀からは、長期国債の買い入れる対象年限を延ばすとの発表がないので、今まで通り1年程度にとどまるのであれば、国債イールドカーブへの影響は限られるのではないか。
●円安通じ日本株の押し上げ要因に
<マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木隆氏>
日銀による金融資産買い入れ基金の増額はポジティブサプライズだ。ほとんどの投資家が金融政策の据え置きをイメージしてただけに、追加緩和がマーケットに与えるインパクトは大きい。今回は長期国債のみの買い入れ枠引き上げであり、日本株への直接的な影響はわからないが、為替市場で円安に振れたことが企業業績の改善期待につながり日本株を押し上げている。日経平均が昨年8月以来となる200日移動平均線(9055円06銭=13日)突破を果たせば、長期的なトレンド転換が期待される。●米金利の上昇伴わないドル高は長続きしない可能性
<IGマーケッツ証券 為替担当アナリスト 石川順一氏>
日銀の金融緩和はサプライズだったが、輸出企業の想定為替レートは78円絡みで設定されているほか、きょうのオーダー状況も77円後半にはオファーが並んでおり、多くの投資家は絶好の売り場として構える可能性がある。今後のドル/円の動きについては、米国は超低金利政策の長期化をコミットメントしており、米金利の上昇を伴わないドル/円の上昇は長続きしないだろう。ドル/円相場と相関性の高い米2年債利回りは0.30%に達していない。仮に78円台に到達しても、そこですぐに売りを仕掛けられて反落するのではないか。
●緩和の基準あいまい、政治からの圧力か
<明治安田生命 チーフエコノミスト 小玉祐一氏>
このタイミングでの日銀の追加緩和には意外感がある。ファンダメンタルズが比較的安定しており、円高圧力も以前よりは緩和に向かっている情勢下で、何を基準に日銀が追加緩和を決定したのかがマーケットには分かりづらい。
米国が時間軸強化策と長期的な物価のゴールを打ち出す中で、日銀の物価安定が分かりづらいとの声もある。デフレは円高が一番の要因、つまり円高デフレとの認識も政府内にあるようだ。おそらく、政治からのプレッシャーが強かったのだろうが、結果として政治からの圧力に弱い日銀という印象を与えかねない。
ただ、追加緩和の10兆円という規模は、一部の市場予想を上回る規模で、為替相場も多少反応している。一定程度、円安方向に相場を動かす力にはなるが、反応は長続きしないだろう。追加的な金利押し下げ余地が限られており、日銀は工夫はしているが、打つ手は乏しくなっている。規模は大きいが、買い入れ資産は国債ということで中身的には驚きはない。国債を買い増すにしても、より残存期間の長い国債を買えば、より中期ゾーンまでの押し下げ効果が期待できるために、為替への効果があるのではないか。
●追い詰められた措置、遅きに失し効果小さい
<クレディスイス証券 チーフエコノミスト 白川浩道氏>
このタイミングで10兆円の基金増額を実施したのは、よほど追い詰められたのだろう。デフレ対応と、財政悪化に対する一種のマネタイゼーション、そして円高対応だろう。しかし、これまで円高を放置しておいて空洞化に拍車がかかってしまった段階でいくら緩和を実施しても、遅きに失している。政治家サイドにしてみれば、もはや地方の雇用がもたない状況になっている。政治の圧力が高まるのも当然だ。
基金を10兆円増額しても、実際に全て買い入れるかというと、これまでの資産買い入れの進ちょく状況や緩和姿勢からみて、はなはだ疑問だ。しかも、今回は買い入れ対象の残存年限を延長せず、引き続き基金での買い入れにとどめているところから、本当の意味での量的緩和とは言えないのではないか。本当の緩和についてやる気があるなら、今後、輪番オペで長いレンジの長期国債を買い入れ、しかも銀行券ルールを外すだろう。おそらく残された手段が少ない中で、今年中にそうした措置に踏み切らざるを得ないだろう。
●ポジティブだがインパクトは続かず
<ソシエテ・ジェネラル証券 グローバル・エクイティ部長 久保昌弘氏>
日銀の追加緩和策決定で円安に振れ、日経平均もプラス圏に切り返した。イングランド銀行(英中央銀行)が資産買い入れプログラムの規模を拡大したことや、欧州中銀(ECB)の3年物長期資金供給オペ(LTRO)の実施などを考慮すると、日銀も追加緩和に踏み切るとみていた。長期国債の買い入れ枠増加を5兆円と予想していたので、10兆円はポジティブサプライズと言える。消費者物価指数1%目標の明確化は、米連邦公開市場委員会(FOMC)と同様の政策で予想の範囲と思われる。規模は大きいが、買い入れ資産は国債ということで中身的には驚きはない。国債を買い増すにしても、より残存期間の長い国債を買えば、より中期ゾーンまでの押し下げ効果が期待できるために、為替への効果があるのではないか。
●追い詰められた措置、遅きに失し効果小さい
<クレディスイス証券 チーフエコノミスト 白川浩道氏>
このタイミングで10兆円の基金増額を実施したのは、よほど追い詰められたのだろう。デフレ対応と、財政悪化に対する一種のマネタイゼーション、そして円高対応だろう。しかし、これまで円高を放置しておいて空洞化に拍車がかかってしまった段階でいくら緩和を実施しても、遅きに失している。政治家サイドにしてみれば、もはや地方の雇用がもたない状況になっている。政治の圧力が高まるのも当然だ。
基金を10兆円増額しても、実際に全て買い入れるかというと、これまでの資産買い入れの進ちょく状況や緩和姿勢からみて、はなはだ疑問だ。しかも、今回は買い入れ対象の残存年限を延長せず、引き続き基金での買い入れにとどめているところから、本当の意味での量的緩和とは言えないのではないか。本当の緩和についてやる気があるなら、今後、輪番オペで長いレンジの長期国債を買い入れ、しかも銀行券ルールを外すだろう。おそらく残された手段が少ない中で、今年中にそうした措置に踏み切らざるを得ないだろう。
●ポジティブだがインパクトは続かず
<ソシエテ・ジェネラル証券 グローバル・エクイティ部長 久保昌弘氏>
日銀の追加緩和策決定で円安に振れ、日経平均もプラス圏に切り返した。イングランド銀行(英中央銀行)が資産買い入れプログラムの規模を拡大したことや、欧州中銀(ECB)の3年物長期資金供給オペ(LTRO)の実施などを考慮すると、日銀も追加緩和に踏み切るとみていた。長期国債の買い入れ枠増加を5兆円と予想していたので、10兆円はポジティブサプライズと言える。消費者物価指数1%目標の明確化は、米連邦公開市場委員会(FOMC)と同様の政策で予想の範囲と思われる。
日銀のいかさま極まれりって感じで、ほとんど発言内容について信じられないな、今度のインフレ目途なんて、長期国債の購入額が40兆円だとか言った処で、その中身が問題。
償還期限が一年未満の長期国債を購入したところで、短期国債と長期国債の代替性を前提のものとにしているのだから、市場は安心して長期国債を買う動機にはならないだろう。銀行券の発行を長期国債残高以下に抑えるルールを取り払い、コア消費者物価指数を目標にし、国会でな納得のいく説明をするべしだ。その際、構造変換など議論の対象にしないことだな、日銀は。構造変換は政府側がすることである。また外需の取り込みも述べてはならない、責任転換も甚だしいからである。マクロの経済は、インフレ、デフレ、為替レート、失業率など「循環的」経済について日銀総裁は述べるべきである。米国でも循環的不況を構造的不況にすり替える者たちが多いが、認識を間違えないようにするべきである。
また、白川総裁は、民間企業の頑張り、海外の需要の取り込み、またデフレ圧力解消を民間企業、また政府の産業政策に求めているようだが、政界中の中央銀行で政策当局としてのセリフでこんなバカなこと言うものはごく少数であるだろう。物価が日銀だけの責任ではないなんて、標準的なマクロ経済学を知らないもののいうことである。
上場企業でさえことに電気業界の収益悪化が甚だしいのに、企業のが頑張っていないなどとぬかす中央銀行総裁など首にした方がいい。外的ショック以外のコアな物価は中央銀行の責任である。説明責任からののがれるな日銀。政府もイギリスを見習って、納得のいく説明責任を求めろ。それがいやなら中央銀行ではなく、中央造幣局とでもしろ!!!



