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関心を引いた記事などのスクラップ・ノート。たまには感想なども入れて・・・。

実り多き2013年のラストゲーム 日本代表欧州遠征取材日記(11月19日)

宇都宮徹壱
「ヘイゼルの悲劇」について
ベルギー戦の会場となる、ブリュッセルのボードワン国王スタジアム。スタジアム正門から入って、向かって右に200メートルほど歩くと、壁面に小さなプレートが設置されている(予備知識がなければ、おそらく何も気づかずに通り過ぎていたことだろう)。ベルギーの公用語であるオランダ語とフランス語による説明文の下には、39名の氏名が記されている。いずれも、1985年5月29日のチャンピオンズカップ(現チャンピオンズリーグ)決勝で発生した「ヘイゼルの悲劇」の犠牲者である。この日、日本代表がこの会場でベルギー代表と親善試合をするにあたり、やはりヘイゼルの悲劇について言及しないわけにはいかないだろう。

 試合前、酒で酩酊(めいてい)していたリバプールのサポーターが、対戦相手であるユベントスのサポーターに襲いかかり、逃げまどう人々が殺到したスタジアムの壁が倒壊。結果として、多数の人々がガレキや倒れ込む観客の下敷きとなった――。悲劇の直接的な原因はパニックによるものであったが、スタジアムの老朽化や警備体制の甘さ、そして何よりフーリガニズムのまん延を事実上放置していた、当時のサッカー界の怠慢があったことは留意すべきであろう。現在のスタジアム観戦におけるセキュリティーシステムが確立するのは、このヘイゼルと89年のヒルズボロという2つの悲劇を教訓として以降のことである。

 悲劇から10年後、スタジアムは大々的な改築が行われ、名称も現在のボードワン国王スタジアムと改められる。そして2000年に開催されたユーロ(欧州選手権)では、オープニングゲームの会場にも選ばれ、悲劇のイメージは完全に拭い去られることとなった。それからさらに13年が経過し、黄金時代を迎えたベルギー代表は、そのほどんどが「ヘイゼル以後」に生まれた世代となった。

 今日この日を迎えるにあたり、FIFA(国際サッカー連盟)ランキング5位(※11月20日現在)のベルギーと、親善試合とはいえアウエーで対戦することについては、それなりの期待感と緊張感はある。だがそれ以上に、かつて「ヘイゼル」と呼ばれていたスタジアムのピッチに、われらが日本代表が立つことに、オールドファンのひとりとして何とも言えぬ厳粛な気持ちを抱かずにはいられない。われわれが現在、曲がりなりにも安全にスタジアム観戦ができるのも、かつてここで犠牲になった人々がいたことを、ゆめゆめ忘れるべきではないだろう。
オランダ戦に続いての「スーパーサブ」遠藤
後半、日本ベンチは山口と清武を下げ、遠藤保仁と岡崎慎司をピッチに送り出す。これまた先のオランダ戦をなぞるようなベンチワークだが、気になったのは2試合続けて遠藤を後半頭から出してきたことである。前回は「山口を長谷部と遠藤、両方と組ませる」という理由で納得できた。が、山口がある程度使えるという見通しが立った今、むしろ「遠藤を後半から使って攻撃のスイッチを入れる」という新たなオプションを、ザッケローニは模索しているようにも思えてしまう。すでに「遠藤スーパーサブ説」が一部でささやかれているようだが、アタッカータイプの選手でもないのに「スーパーサブ」というのは、非常にユニークな起用方法であると言えよう。

 その遠藤が、さっそく仕事をしてみせる。後半8分、左サイドに展開して相手を引き付けながら、アウトサイドで中央へパス。受けた本田は巧みなボールタッチを交えて、得意でないはずの右足を振り抜いて逆転ゴールを挙げる。パスの出し手と受け手、両者の間の強い信頼関係を感じさせるような見事な得点シーン。日本はさらに10分後にも、長谷部から柿谷、さらに岡崎へとボールがつながり、最後は岡崎がきれいに右足ボレーでたたき込んで3点目を挙げる。予想もしなかった展開に、地元サポーターからは猛烈なブーイング。ワールドカップ(W杯)予選でのベルギーは、10試合で失点4と手堅い守備のイメージがあった。しかしながら、コロンビア戦から続く失点のパターンを見る限り、コンパニ不在だけでは説明できない、予選突破直後特有の「踊り場状態」にあるようにも感じられる

 それでもベルギーには、W杯シード国としても意地がある。後半34分、右コーナーキックからアルデルワイレルトが高い打点のヘディングシュートを決めて1点差とすると、沈滞ムードのスタンドに再び火が点き、ベルギーの動きも一気に活性化する。完全アウエーの状況下、残り11分(アディショナルタイムを含めれば15分)をいかにコントロールして、勝ち点3をもぎ取るのか。ある意味、本大会を意識した極めて重要なレッスンであると言えよう。ここでもザッケローニ監督のカードの切り方は実に的を射たものであった。疲れの見える香川と酒井高に代えて、ボール奪取に優れた細貝萌と今野泰幸を相次いで投入。その一方で、遠藤をボランチから1列前に上げ、いつでもカウンターから反撃できる態勢も準備しておく。

 個人的に圧巻だったのがアディショナルタイム、ベルギーがカウンターを仕掛けてきた際、5〜6人の選手が一斉に自陣に戻って対応していたシーンである。守備から攻撃、攻撃から守備へのスムーズな移行が、この時間帯でもしっかりできているではないか。この
3年間、ザッケローニ監督が目指してきたサッカーというものが、きちんと形になっている。このシーンを見た時、私は日本の勝利を確信した。そしてタイムアップ。FIFAランキング44位の日本が5位のベルギーを相手に、アウエーの地で完勝するという痛快な瞬間に、われわれは立ち会うこととなったのである。
11月シリーズの一番の収穫は何か?
さて、今回の欧州遠征でのザッケローニ監督の采配について、当の選手たちはどのようにとらえているのだろうか。いろんな意見がある中、この2人の発言に注目したい。

「監督がどういう意図で選手の入れ替えをしているか分からない。でも、いろいろな選手を使って、本大会というよりはチームのなかで目に見えて競争が増えてきているし、出た選手はみんな結果を出している。そういう意味ではポジティブだと思います」(長谷部)
「みんなが安定したプレーをしていたと思うので、誰が出ても計算できると監督が感じていれば、それは選手の力だと思います。選手を入れ替えるのは勇気のいることだと思いますけど、この2試合に関しては良い効果が生まれたと思います」(遠藤)

 言うまでもなく、長谷部も遠藤もこれまでのザッケローニ体制において、よほどのことがない限りスタメンから外れることのない、コア中のコアメンバーであった。実際、長谷部は所属クラブで出番がない時、そして遠藤はプレーの舞台がJ2となっても、代表でのポジションが常に保証されている立場にあった。そんな彼らの口から「競争」とか「良い効果」といった言葉が出ていることに、私はこのチームがようやく健全な方向に進んでいることを強く実感した。もちろん、今回の遠征での山口の台頭は、彼らにとって心中穏やかでない部分もあったはずだ。しかしそれ以上に、チームのさらなる成長は、長谷部にとっても遠藤にとっても大いに望むところであろう。

 この11月シリーズは、実に実り多き遠征であった。その中でも最大の収穫のは、国内組も海外組も関係なく、全員が自信をもってプレーして「ひとつのチーム」になろうとするプロセスが、明確に感じられたことだと個人的には思っている。もちろん、課題もないわけでない。2試合とも試合の入り方は非常にまずかったし、セットプレーでの失点もおよそ改善されたとは言い難い。さらに言えば、この2試合で本田と吉田が不在のシミュレーションができなかったのも気になるところだ(ザッケローニ監督は吉田のバックアッパーをどう考えているのだろうか)。そうした不満や不安はいくつかあるにせよ、それでも13年最後の試合をこのような気持ちのよい形で締めくくったことを、まずは素直に評価したい。

 次回の日本代表の試合は来年の3月5日を予定している。それまでの4カ月は、各々の選手がそれぞれの戦いの場で自らを高めながら、6月のW杯本大会を目指すことになる。来年3月には、どのような顔ぶれがピッチ上に並んでいるだろうか。あれこれ想像しつつ、当連載を終えることにしたい。

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「創造性あふれる日本」が与えた衝撃 ベルギーとオランダから届いた賞賛の声

「日本がとても良く、厳しい試合になった」
2014年ブラジルワールドカップ(W杯)予選のベルギーは強かった。彼らはクロアチア、セルビアといった強国の入ったグループAを8勝2分けと無敗で勝ち抜いて本大会出場を決めた。02年のW杯以来、ユーロ(欧州選手権)も含めて本当に久しぶりのビッグイベントへの出場決定に国民も沸いた。07年には71位だったFIFA(国際サッカー連盟)ランキングも5位(11月20に現在)まで上がり、12月に行われるグループリーグ組分け抽選会の第1ポット入りを果たした。選手たちもイングランド、スペイン、ドイツ、イタリア、というビッグリーグでプレーするスターぞろいとあって、ベルギーでは代表チームに対するブームが起こっていた。

 しかし、11月に入ってから、そのスター軍団はホームでコロンビア、日本に連敗を喫してしまった。

「僕は日本の方がコロンビアより強かったと思う。コロンビアはFIFAランキング4位。そのことが日本のレベルの高さを示している」(ダニエル・ファン・ブイテン)

 左サイドバックのヤン・フェルトンゲンは日本に敗れたことをチームに対する“ウェイクアップ・コール”と捉えた。

「日本のサッカーがとても良く、ベルギーにとっては厳しい試合になった。周囲はベルギーのことを『W杯でも主役になれるのでは』と言っていたが、今日の試合は目を覚ます機会になった。僕はあまり日本のサッカーのことを知らなかったけど、予想以上に良くて驚いた」

 ベルギー代表の次戦は3月のコートジボワール戦と、だいぶ先のことになる。過熱する期待をいったん冷ますには良いタイミングだったのかもしれない。
現地紙は軒並み高評価
 スポーツ専門ウェブサイトの『スポルツァ』が「創造性にあふれる日本がベルギーを倒す。本田圭佑とその仲間たちはショート・コンビネーションのサッカーで“赤い悪魔”(ベルギー代表の愛称)を痛めつけた」と報じた通り、ショートパスを主軸とする日本のコンビネーションサッカーは、ベルギー人に深い印象を残した。

『スド・プレス』紙のバン・インプ・クリストフ記者はベルギー対日本の感想をこう語っている。

「ベルギーの布陣があまりに攻撃的すぎて、チームのバランスが悪かった。しかし、日本も良かった。オランダ相手にも素晴らしいサッカーをしていたし、香川(真司)、本田といった選手もいるから、今日の出来は予想の範囲内。テクニカルでスピードがあって、とても良いチームだった」

『ヘット・ニーウスブラット』紙は本田と香川、さらに後半から出場した遠藤保仁と岡崎(慎司)に採点で7を与えた。ベルギーのケビン・ミララス、ケビン・デ・ブラウネも同じく7を受けた。
完敗から4年、進化を証明
隣国オランダからもこの試合をフォローするために記者がやって来た。そのうちひとりがオランダ代表を追い始めて20年というエドウィン・ストラウス記者だ。彼はオランダ戦、ベルギー戦と2試合続けて先制された日本が、しっかり試合を作り直したことを誉め称えた。

「日本が初めてオランダと試合をしたのは2009年。あの時の日本も素晴らしいサッカーをしたが、オランダに1点奪われるとずるずる失点を重ねて、終わってみれば0−3で負けていた。しかし、今の日本は1点を失っても、しっかり試合を立て直すことができる。それは自分たちに自信があるから。パニックに陥ることなくボールを落ち着いてさばくことができる。もちろん組み合わせにもよるけれど、W杯では準々決勝に進出する可能性だってある。オランダ、イングランドより良い成績を収めるんじゃないか」

 日本対オランダ戦が行われた翌日、11月18日のサッカートーク番組『ストゥディオ・フットバル』でオランダ人のサッカー専門家が日本をとても好意的に捉えていた。AZ(オランダ)やポルト(ポルトガル)といったチームを率いた指導者、コー・アドリアーンセは「個々の選手を分析し、比べた場合、私は日本の方がオランダより勝っていたと思う。後半に入って彼らはチームとして機能した。日本はスピード、ボールの扱い方、テクニックといった点で、オランダを上回っていた。オランダには何人かの飛び抜けた力を持った選手がいる。例えば(アリエン・)ロッベン。もしかするとケビン・ストロートマンもそうだろう。しかし、後半に入ると彼らにボールが渡らなかった」と語った。

 ルート・フリットは日本とオランダの中盤の選手を比べ、「試合中、目を見張ったのは、日本が中盤で相手のマークを背負っていても、しっかりターンしていたこと。そこがオランダに欠けていたことじゃないか。(ラファエル・)ファン・デル・ファールトはターンできていた。(負傷で招集外の)ウェズレイ・スナイデルもできたんじゃないかと思う。しかし、ストロートマンはボールをたたいてばかり。一方、日本は酷いピッチの上でもハイテンポで簡単にコンビネーションサッカーをやっていた」と解説した。
ベルギーが日本戦で学んだこと
 アドリアーンセ氏は、日本の勇気を持ったサッカーに感銘していた。

「アルベルト・ザッケローニ監督はイタリア人。今、イタリアのサッカーはとても攻撃的になっている。ルート(フリット)の時代と違って、チェーザレ・プランデッリ監督のイタリア代表が攻撃的に戦い、アントニオ・コンテ監督がモダンで魅力的なサッカーをするユベントスを率いている。私が思うに、ザッケローニ監督はビハインドを負ったことから、後半、戦術を変えてプレスを前線からかけてきた。こうした勇気のあるサッカーができるチームは世界でも限られている。ドイツ、イタリア、バルセロナスタイルのスペインができるし、われわれ(オランダ)もやれると思う。でも、そのぐらいだろう」
 
 日本代表との試合をオランダ人もベルギー人も学びの場として捉えている。ベルギーの『ヘット・ニーウスブラット』紙は「日本戦から、われわれは何を学んだか?」という記事を掲載している。

「ベルギーは(まだ)トップの国ではない。“赤い悪魔”は2013年を良い年だったとして記憶にとどめたいだろうが、この1年を振り返るためには日本戦とコロンビア戦のDVDを一番上のところに置いておかないといけない。コロンビアからは個々の実力を学び、日本からは非常に良く動き、コンビネーションサッカーをする能力が、良いチームを作ることを学んだ」

 日本は他国から学び、自国に取り込もうとする意欲に富んだ国だ。今回、ベルギーとオランダが、日本のサッカーから学ぼうとする姿勢を示したこともまた、日本にとっては学びの機会となるだろう。

イエレン氏はマクロプルーデンス政策重視へ、金融政策と同等に

[ニューヨーク 15日 ロイター] -米連邦準備理事会(FRB)の次期議長に指名されたイエレン副議長は、物価安定と雇用最大化という二重の使命と同じ程度に、金融市場の安定確保と銀行の厳しい監視という「マクロプルーデンス政策」に重きを置きそうだ。

イエレン副議長の14日の上院証言では、ウォール街の監視と安定化の問題が支配的な議題となった。副議長は、FRBの優先リスト上で金融監督は金融政策と対等な位置を占めるべきだと述べた。

副議長としてのイエレン氏は現在、なお脆弱な金融システムを安定させるための決定へと、同僚の理事らを意欲的に導いているように見える。

イエレン氏はエリザベス・ウォーレン上院議員とのやり取りで、1990年代のような金融監督問題でのFRB定期会合の復活について、「(検討に)値する案だ」と証言した。

副議長はまた、資産バブルの芽を摘み取るための利上げなど、伝統的な金融政策手段を使う用意もあると強調。「大きすぎて潰せない」銀行への対処は「危機後の時代における最重要目標の一つとする必要がある」と明言した。

イエレン副議長はかねてバーナンキ議長とともに、大手金融機関のリスクテークを抑制し、経営難に陥った大手銀行は政府が救済してくれるとの概念を消し去る必要性を頻繁に唱えてきたが、上院証言では新たなアプローチを示した。

RBSアメリカズの米国債ストラテジーヘッド、ウィリアム・オドネル氏は「FRBがいかに大胆に大手銀行の監督体制を改革したかについて、イエレン氏は明快に説明し、マクロプルーデンス面の監督の議論に従来よりも多くの時間を同僚らと費やすであろうとの印象を残した」と指摘。「マクロプルーデンス政策と金融政策のバランスが改善することが示唆された」と話した。

金融危機を受けて2010年に成立した米金融規制改革法(ドッド・フランク法)により、FRBは金融システムのリスクが経済全体に及ぶことを防ぐ、いわゆるマクロプルーデンス規制の責任を負うことになった。

<バブルと大手銀行>

金融リスク退治の方法については、FRB内部で意見の相違があるようだ。

ダラス地区連銀のフィッシャー総裁は米セントラルバンカーの中で唯一、大きすぎる銀行は単純に分割すべきだとする大胆な案を唱えている。またスタインFRB理事は今年、FRBが金融政策の引き締めにより資産バブルを阻止すべきかどうかという議論の口火を切った。

イエレン氏は14日の上院証言で、金融安定を脅かすような広範なレバレッジの蓄積はまだ認められないと発言。最高値を更新する米国の株価が「バブルに似た」領域に入っているとは感じないとも述べた。

しかしイエレン氏は、「(FRBの)監督能力は非常に重要であり、重要性は金融政策とまったく同じだ」と明言。通常はFRBスタッフが取り扱うような重要な規制関連の決定に、政策決定幹部をもっと関与させることは可能との考えも示した。

「1990年代には、理事会は実際に定期的に会合を開いて監督問題を協議していた。私としては、そうした会合を非常に価値があると考えていた。従って、検討に値する案だと思う」とイエレン氏は述べた。

グリーンスパン前FRB議長と、初期のバーナンキ議長の下でのFRB体制は銀行監督について不干渉の姿勢を採った。しかし2004年から10年にかけてサンフランシスコ地区連銀総裁を務めたイエレン氏は今なお、自身とその他の監督当局者が、緩い貸し出し慣行と危機を招いた住宅価格の高騰を結び付けて考えられなかったことに心を痛めている。

銀行監督の問題は通常FRBの規制専門家が対処し、タルーロ理事が統括している。ホワイト・アンド・ケースのパートナー、アーネスト・パトリキス氏は「タルーロ理事は事実上一人でこの責務を担ってきた。問題は、重要な課題について理事会の関与を強めるような変化が起こるかどうかだ」と語った。

(Jonathan Spicer記者)

「エネルギー価格差、日欧に打撃」 IEAが13年版報告書

2013.11.13 00:18 産経新聞
 【ロンドン=内藤泰朗】国際エネルギー機関(IEA)は12日、2035年までのエネルギーの長期需給を示す「世界エネルギー展望」の13年版報告書を発表した。新型天然ガス「シェールガス」の開発などで米国の電力価格は日本や欧州、中国の約半分となり、日欧は産業競争力を奪われて大きな打撃となる可能性があると警告した。

 報告書によると、米国の天然ガス価格は10月現在、欧州の約3分の1、日本の約5分の1で、米国の産業向け電力価格も日欧中より安い。この傾向は35年まで続き、米国の電力価格はこうした国々の約半分になると予測した。

 この結果、大量の電力を必要とする化学やアルミニウム、鉄鋼、石油精製といったエネルギー集約型産業が影響を受け、日欧はこの分野で世界輸出に占めるシェアを現状の3分の1程度失うと警告した。先進国では米国だけが輸出を拡大するとの見通しも示した。

 また、米国は35年までにすべてのエネルギー需要を国内資源で賄えるようになるとしており、エネルギー価格差縮小のため、日欧に省エネ技術導入の加速化や天然ガスの調達価格の引き下げを促すよう提言した。

 一方、原子力エネルギーは35年までの間、「中国や韓国、インド、ロシアに牽引(けんいん)される形で増加する」と予測した。風力や太陽光など再生可能エネルギーも、世界全体の発電量増加分の約半分を占めるが、長期の安定供給などについては疑問を呈した。

被災地で100遺体以上を発見、フィリピンの巨大台風

CNN.co.jp 11月9日(土)16時59分配信

(CNN) フィリピン中部の島を横断した超大型の台風30号(ハイエン)の被害で、甚大な被災地とされるレイテ島タクロバン市での犠牲者は100人以上に達する恐れがあることが9日わかった。路上に遺体が散乱しているという。

同国の災害対策当局が全土の被害の全容解明を急いでいるが、被災地の自治体で具体的な死者数の情報が入手されたのは初めて。死者が100人以上との数字はタクロバン市の民間航空行政当局幹部が無線で連絡してきた。負傷者は100人以上。

CNN記者は9日、首都マニラを出発した軍貨物機に同乗しタクロバン市の現状を目撃したが、「津波に襲われたような惨状」と報告した。空港のターミナルビルは完全に破壊されているという。

台風30号はフィリピンを襲った台風では最大規模の勢力とされる。通信や交通網が遮断もしくは乱れており、タクロバン市を含めた被災地での救援作業が進めば犠牲者が激増する恐れがある。
同国の災害対策当局は9日未明の段階で、台風30号の襲来に絡む死者は少なくとも4人と発表していた。

また、ある救援活動者によると、ビサヤ地方に位置するボホール島では、9日現在まだ停電が続いているが、携帯電話サービスは復旧し、被害を受けた道路も開通したという。先月大規模な地震に見舞われた同島では、35万人がテントや避難所で生活しており、台風の影響が懸念される。
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楽天、揺れるブランド~薬ネット通販解禁では改革者、球団日本一、不当割引表示疑惑…

 Business Journal 11月8日(金)3時2分配信
11月3日、プロ野球・東北楽天ゴールデンイーグルスが、球団創設9年目で初の日本一に輝いた。その興奮冷めやらぬ中、親会社の楽天がふたつのニュースで注目を集めている。

 まずひとつめが、「インターネットでの医薬品販売」に関してだ。11月6日、政府は今国会に提出する薬事法改正案に、一般用医薬品(市販薬)の99.8%のネット販売を解禁する一方で、安全性に懸念がある28品目を禁止・規制する新ルールを盛り込む方針を決定。市販薬1万1000品目のうち、ネット販売を禁止するのはエフゲン(殺菌消毒薬)など「劇薬」の5品目。また、医療用から切り替えられて間もないリアップX5などの23品目は「要指導医薬品」と名付けられ、販売開始から3年以内に安全性の評価を終えた後、解禁されることになる。政府は今国会での改正案成立を目指しており、来年春にはネット販売の新たなルールが導入される予定だ。

 以前からネットでの医薬品販売の全面解禁を求めてきた楽天の三木谷浩史社長は、この決定を不服として、政府の産業競争力会議の議員を辞める考えを表明した。7日付日本経済新聞によると、三木谷社長は6日に開いた記者会見で、政府が決めた新ルールを「改革と真逆の方向に進んでいる」「政府は医師が処方した薬も対面販売に限ろうとしている。IT(情報技術)を活用して医療費を抑制すべきなのに時代錯誤も甚だしい」と厳しく批判。また、楽天傘下の医薬品ネット通販会社・ケンコーコムは行政訴訟を起こす構えで、三木谷社長も「立法化されたら国を訴える側を支援する。国の民間議員と両立できない」と国と徹底的に争う姿勢を見せている。

 7日付朝日新聞記事によると、三木谷社長が規制緩和策や成長戦略を協議する産業競争力会議の議員に起用されたのは、“安倍晋三首相のご指名”だったという。政権は当初、医薬品のネット販売解禁に狙いを定めた三木谷社長に歩調を合わせた。ところが、10月に厚生労働省の専門家会議による報告書が出されると、政府は安全性に配慮してネット販売を制限する方向に傾き、三木谷社長と対立するかたちとなったのだ。

 ニッセイ基礎研究所専務理事の櫨浩一氏は6日付ロイター記事で、「規制緩和をのろのろとやっていては会社経営がうまくいくはずないとの思いが強かったのだろう」と三木谷社長に一定の理解を示しながらも、「反面、政治の視点から見れば、国民生活への配慮もある。規制緩和への反対にも一理あり、何十年もかけて築いてきたリスクへの配慮を一気に崩すには問題も多い」と、その性急さを指摘している。

 ただ、7日付日本経済新聞社説は、「ネット販売は危険性が高く、薬剤師などによる買い手との対面販売は安全性が高い」とする厚生労働省の説明を「根拠は希薄である」と指摘。「対面、ネットともに売り手は薬局・薬店の薬剤師だ。ネットを認めないのなら対面も違法とし、処方薬に戻すのが筋ではないか」と疑問視している。

 また、経済学者の池田信夫氏は6日、自身のブログで、市販薬の販売が全面解禁に至らなかった理由を「議員に対して薬剤師連盟が3年間で14億円の政治献金をしているというわかりやすい構造がある」と説明している。市販薬だけにとどまらず、医師の処方箋が必要な「医療用医薬品」のネット販売も狙う三木谷社長にとって、越えるべきハードルはまだ多くありそうだ。

●景品表示法違反の可能性も

 そして楽天が世間を騒がせているもうひとつが、同社が運営するインターネット仮想商店街・楽天市場での不当表示問題だ。楽天市場では、楽天イーグルスの日本一を記念したセールを3日夜から7日午前2時まで実施。セールでは、星野仙一監督の背番号にちなんだ「77%割引」が目玉商品だったが、その一部で通常価格を引き上げて表示することで大幅に割引しているように見せかけていたという。

 7日付朝日新聞デジタル記事によると、不当表示があったのは、一部の店が販売していたシュークリームやするめいかなど。他の通販サイトでは10枚9800円で販売されていたするめいかが、楽天市場では通常価格が1万7310円と表示されていたケースも確認されている。

 消費者庁によると、その価格で販売した実績がないのに「定価」「通常販売価格」などと表示した場合、景品表示法が禁じる「有利誤認」にあたる恐れがあるという。この問題について、楽天は「利用者の指摘や社内の調査で複数の店舗で価格の表示に不適切なものがあったことがわかった。詳細については各店に聞き取りをしており、調査中」としている。

 ネットユーザーからは「優勝してブランドイメージを損なうのは史上初めて」「77%オフとか言っているけど、通常価格を高くしているだけの二重価格が横行。こういうとこが楽天が信用されないゆえんだ」など、楽天を批判する声が多く見られる。ネットでの医薬品販売解禁については改革者として評価されている側面もある楽天、そして三木谷社長だが、楽天イーグルスの日本一という快挙とのギャップも手伝い、ブランドイメージを損ないかねない綱渡りの状態がしばらく続きそうだ。

マー君の9回投入 決まったのは「7回終わってから」

◇日本シリーズ第7戦 楽天3―0巨人(2013年11月3日 Kスタ宮城)スポニチアネックス 11月4日(月)0時20分配信



 優勝投手となった楽天の田中が、ビールかけを終えて1時間もたたないうちにフジテレビ「すぽると」に生出演。連投救援となった登板について振り返った。

 前日に160球完投しながらの連投となったが、「いつでも行ける準備はしています」と首脳陣に伝えていたという。9回からの投入について「正式に決まったのは7回終わってから」。6回まで美馬が無失点で抑え、7回から登板した則本も好救援した時点で最後は田中で締めることが決まったという。

 9回に投じた15球のうち、9球がスプリット。「(スプリット中心の配球に)迷いはなかったです。真っすぐが思うように投げられていなかったので自信がある球で」と話した。

 前日完投しての連投に「疲れはありましたけど、ここまで来たらそういうことを言っていられないですし、もうこれで終わりなので気持ちで投げました」と充実感たっぷりの表情で語った。

楽天・田中、絶叫「日本一になったぞー!」

(日本シリーズ第7戦、楽天3-0巨人、楽天4勝3敗、3日、Kスタ宮城)楽天は3点リードの九回のマウンドに田中を送った。田中は2安打を許したが、巨人打線を無失点に抑え胴上げ投手となった。


 エースは「昨日は情けないピッチングだったので、今日、出番がもらえるなら『いつでも行くぞ』という気持ちで準備していた。この舞台を用意してくださったチームのみんな、ファンの方々に感謝しながらマウンドに上がりました」と話した。

 日本一を決めて「ほっとしました。最高のシーズンでした」と振り返った後、最後に楽天ファンに向けて「日本一になったぞー」と絶叫した。