6月24日8時3分配信 産経新聞
【モスクワ=内藤泰朗】北方四島周辺海域で日本漁船が一昨年夏、ロシア国境警備艇に銃撃・拿捕(だほ)され乗組員1人が死亡した事件で、日本政府側が事件の物的証拠としてロシア側に引き渡しを求めている同漁船が露国営漁業関連企業にすでに譲渡されていたことが産経新聞の調べで明らかになった。ロシア側は、船体の日本引き渡しを今後とも拒否する姿勢だ。来月初めの主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)開催時に日露首脳会談が予定されており、同問題が取り上げられる可能性が出てきた。
ロシア連邦資産庁、極東・サハリン州代表部の担当者は産経新聞の電話取材に対し、昨年4月に北海道根室市のカニかご漁船「第31吉進丸」の船体を裁判所から同庁の管理下に置いた後、国営「漁業資源」会社の資産に移管したことを明らかにした。同社はロシアの水産資源の調査・管理のほか、水産会社への漁獲割り当てを行う業務を担っており、同漁船はサハリン州内の港に係留されているという。
「漁業資源」会社側は産経新聞のこの件に対する問い合わせに対して「回答はできない」と拒否。同社を統括しているロシア下院国家漁業委員会(クライニー委員長)も回答していない。
これに対し、日本政府筋は「これまで通り漁船の返還を求めていく。それが、北方領土周辺海域でのこうした事件の再発防止につながるとロシア側には主張している」と述べ、日露両国の協議で今後も同問題を取り上げる姿勢を示した。
日本側は同事件の直後、塩崎恭久外務副大臣(当時)をモスクワに派遣し船体の返還などを求めてきた。しかし、ロシア側は、日本側の強い働きかけにもかかわらず、船体を国営会社に移管しロシアの法律を盾にあくまで船体の引き渡しには応じない姿勢だ。
7月7日から3日間、開催される北海道洞爺湖サミットでは、ロシアのメドベージェフ大統領が初訪日し、福田康夫首相との日露首脳会談も予定されている。ロシア側が、戦後60年以上にわたり未解決となっている北方領土問題と密接に関係し、人命が失われた同事件の再発防止に向けた協力を無視することは異常な事態といえ、日露首脳会談の議題となる可能性も指摘されている。



